十代後半から二十代のころ、伊丹十三さんの本をよく読んでいました。
当時はまだ監督業はされておらず、私の中では大人の俳優さん、という印象でした。
田舎の高校生の世界は狭かったので、伊丹十三さんの本で初めて知ったことはたくさんあります。大人社会や見たことのない世界へのあこがれにもつながっていたと思います。
そして、伊丹十三さんの本から習った、今でも私の行動のベースになっていることがひとつあります。
伊丹さんは料理をなさるのですが、調理をするときのルールとして、使った調理器具はすみやかに片付ける、ということが書かれていました。
調理の途中でも、使い終わったものは洗って片付ける、調理が終わり料理ができあがったときは、台所には調理道具の汚れものは何もない、という状態。
だから、台所をきれいにしたいときは料理を作る、と書かれていたと思います。(記憶がうろ覚えですみません。違うかもしれません。)
それは、何かの調理手順を描写している中で書かれていたと思います。作っていた料理が何かは忘れたのですが、この「使った調理器具は調理中でも順次すみやかに片付ける」ということは高校生時代の私に斬新に思えました。
我が家は母が病気でいなかったので、料理は主に父、ときどき私が作っていましたが、調理器具は使い終わったらとりあえずそのまま、食べ終わった食器は水を張った桶につけておいて、ひと段落したらそれらを洗う、という手順だったのです。
伊丹流をさっそく実践してみました。
クッキー作りで試してみました。
材料を出して、切る、計量する、混ぜる、容器に入れる、焼く・・・。
これまでは使い終わったものもそのままおいておいて、最後にまとめて片付けていましたが、今回は工程ごとに洗う、捨てる、片付ける。
そうしたら、本当にクッキーが焼きあがったときは、台所はすっきりしていました。
ほほう、できるもんだな。
それからはご飯を作るときも、調理の隙間、手があいたら包丁やまな板、鍋やボールをちゃちゃっと洗うようになりました。
それが、何十年もたった今も習慣になっています。
調理の合間にお鍋を洗いながら、伊丹さんの本で習ったんだよな、これ、とつぶやいています。
これは、実は料理だけでなく、仕事でも応用ができます。
不要になったメモはすみやかに片付ける、パソコンの画面で使い終わったウインドウは閉じる、など、後回しにしないとスッキリです。
試してみようと思われたら、まずは取り組みやすいことからやってみることをお勧めします。
私の行動に大きく影響している話しなのですが、どの本に書かれていたのか、何度かの引越しの際に失くした本もあるので記憶があやふやです。
今でも手元にある「ヨーロッパ退屈日記」という本は当時私のヨーロッパへのあこがれを倍増させた本で、今読んでもおもしろいです。
多才な方ですね、伊丹十三さん。